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フランスその76(パリ編PART53)【ベルサイユ宮殿のトイレ事情】

Grand Canal

KENです。

前回は、ベルサイユ宮殿と村上隆コラボとルイヴィトンコラボを紹介しました。

今回は、ベルサイユ宮殿のトイレ事情を紹介します。

※画像は水に流すということで選んでみました

サン・マルタン運河編でご紹介したようにパリの一般家庭にはトイレというものがなく、pot de chambre(部屋の壺)と呼ばれるいわゆるおまるが置いてあり、それが満杯になると窓から中身を道路に投げ捨てるという、ちょっと日本人には信じがたい光景が繰り広げられていました。

それは、チュイルリー宮殿(今は庭園しかありません)やベルサイユ宮殿も例外ではありませんでした。

そもそも、宮殿の設計段階からトイレは含まれていません。

では、国王や王族の方々と廷臣達はどのように用を足していたのかというと、chaise percéeと呼ばれる穴あき椅子を使用されていました。

それはどういうものかというと、ビロードや毛織物を張り、金糸で飾りがつけられた高級家具とも言うべき椅子で、フタが開くようになっており、フタを開けて下に置いてある排泄物用の陶器製の容器に用を足していました。

これは、男性だけでなく宮廷の女性たちも使っていました。それも人前で堂々とです。

なかには、二つ便座の付いた椅子もあり、おしゃべりしながら用を足していたそうです。

ただ、太陽王ルイ14世(Louis XIV)の時代になって、政治の中心がベルサイユに移ったため、宮殿には何千人という廷臣が常駐していました。宮殿内には274脚の穴あき椅子があったそうですが、とてもそれだけでは足りず、みなさんアチコチで用を足されていたそうです。

宮殿のまわりには異臭がただよっていました。

宮殿の庭にあるグランドカナルは元々数十キロ離れたセーヌ川からの水を引いています。運河を作る高度な技術があるのですから、トイレ設備を設置しようという考えにはならなかったのかと思います。

それはともかく、ルイ14世も穴あき椅子を使用していました。太陽王の日常生活は、起床の儀、就寝の儀など全てが儀礼化されていて、これらの儀礼に参加することが宮廷人にとってのステータスとなっていました。

とりわけ、王が穴あき椅子で用を足す場に居合わせることは最高のステータスでした。王に最も信頼され寵愛されていることを意味します。

太陽王の後を継いだ最愛王ことルイ15世とその愛人ポンパドゥール夫人の穴あき椅子はさらに豪華を極めたそうです。

その後も、この穴あき椅子は進化し、読み書きができる円卓付きのものや貯水槽付きで完全無臭をうたった商品まで登場しました。

トイレ環境がすこしづつ改善されるのは19世紀半ば過ぎのナポレオン3世の時代からです。

ちなみに、ベルサイユ宮殿,グラン・トリアノン,プチ・トリアノンの見当たるところに穴あき椅子はありませんでした。マリー・アントワネットが幽閉されていたコンシェルジュリーの椅子も籐で出来た穴あき椅子だったそうですが、ぱっと見分かりませんでした。

まあ、そりゃそうだよねと。

次回は2015年の旅行に戻って、ベルサイユ・リブ・ゴーシュ駅からシャンゼリゼ通りへ向かいます。

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