フランスその33(パリ編PART10)【貴婦人と一角獣の小説を読んでみた後編】

La vue

KENです。

前回は、小説「貴婦人と一角獣(the LADY and the Unicorn)」の前半パートであるヴィスト家の屋敷と人物の説明をしました。

今回は、話の中盤以降を占めるブリュッセルのタペストリー工房と全体の感想を述べます。

タペストリー製作の工程が非常に参考になりました!

※アイキャッチ画像は、タペストリーの1つ「視覚」

女性好きの絵師ニコラは、パリでタペストリーの図案を完成させます。

ブリュッセルのノートルダム・デュ・サブロン教会近くのオート街(Rue Haute)にあるジョルジュ・ド・ラ・シャペルのタペストリー工房で実際にタペストリーの製作を行うところから後半の話がスタートします。

 

人物紹介

タペストリーのモデルになった2人の女性について紹介しておきます。

クリスティーヌ・デュ・サブロン(触覚)

タペストリー工房の主人ジョルジュの妻で、男顔負けのタペストリー織の腕を持っているのだが、ブリュッセルの法律で、女性はタペストリーを織ってはいけないことになっていてそれを歯がゆく思っている。

アリノエール・ド・ラ・シャペル(視覚)

盲目の女性で、ジョルジュとクリスティーヌの娘。

花の種類に精通しており、タペストリーに描く樹木や花についてのアドバイスを受ける。家の存続の為に、嫌いな相手と結婚させられそうになっていることを不満に思っている。

ストーリー開始

ブリュッセルの織工房では、タペストリーの製作シーンとニコラがアリエノールをナンパするのが話のメインとなります。

タペストリー製作シーンで、次の3点が詳細に描かれていました。

  • 絵師の図案を元にタペストリー用の下絵を描く(タペストリーのサイズに拡大する)
  • 貴婦人と一角獣の他に樹木や花々をタペストリーに添える千花文(ミル・フルール)について
  • タペストリーに使う糸や染料の種類や実際の作業について

話の後半で、タペストリーの納期が間に合わなくなりそうになり、女性の手も借りざるを得なくなり、クリスティーヌも秘密でタペストリーを織るのを手伝います。

それを見て、ニコラは「触覚」のモデルにします。

触覚の貴婦人は、旗の織物と一角獣の角を触っています。ずっとやりたかったタペストリー織と恐らく夫ジョルジュの男根を示唆しているのだと思います。

加えて、ニコラはアリエノールと男女の関係になりますが、ニコラはクロードのことが忘れられないので結局別れることになります。

クロードは、タペストリー製作を依頼した夫人の娘。

「視覚」は引きつった顔の貴婦人の膝の上に一角獣が脚を載せていますが、2人の関係をそのまま表しています。

感想

まず、話の後半で女好きが災いしてニコラが痛い目にあうのですが、本を読んでいる人の大半は因果応報と思ったはずです。

あと、性的な表現がたびたび出てくるので、子供や性的な話が苦手な方にはオススメしづらいですす。

私は裁縫が出来ないので、織るシーンはちんぷんかんぷんでしたが、大変な作業だということは分かりました。実際作成するのに2年かかっています。

「たった一つの望み」の様々な解釈が面白かったです。

著者は、夫人と娘それぞれの思いに託しています。

夫人ジュヌヴィエーヴの考える「清らかさや安定」か娘クロードの考える「誘惑や自由」かで大きく異なってきます。

機動戦士ガンダムUCネタ

機動戦士ガンダムUCでは、一角獣ことユニコーンを可能性の獣として扱っていました。

主人公バナージ・リンクスがある選択を迫られるシーンがあります。

世界を揺るがす事実を「隠して現状を維持する」または「全てを公表して混乱を招く」かどうか。

結局、バナージは「全てを公表する」を選びますが、選択肢を委ねるのは小説とも似てるものがありました。

次回は、クリュニー美術館の他の展示物を紹介して、恒例のお土産タイムに入ります。

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